人ごみの中に一人でいると、家で一人でいるよりも孤独を感じるのはなぜだろう。
さみしいのとは違う。
ああ一人なんだと、漠然と感じる。
だから人ごみの中に、会いたい人の姿を探してしまうんだ。
なるべく下を見るようにしながら、目的の店へとフラフラ歩いていると、前から来た人と肩がぶつかった。
「っ!…ごめんなさい」
「え。あれ? 美緒?」
顔も見ずに謝って、そのまま去ろうとしたあたしを、ぶつかった相手が呼び止める。
聞き覚えのある声に目を上に向けると、『超イケメン』がそこにいた。
「やっぱ美緒だ。休みに会えるなんて、こりゃもう運命と認めるしかないよな?」
「コータ先輩…」
「美緒の私服はじめて見ちゃった。カワイイじゃん」
あたしは着替えの動作すら面倒で、ワンピースを一枚着ただけだ。
コータ先輩こそカッコイイ。
細身のパンツに薄手のジャケット。
アクセとかはつけてなくてシンプルだけど、大人っぽくて似合ってる。
まあ、元が『超イケメン』なんだから、何着たってカッコイイんだろうけど。
「美緒も買い物?」
「いえ。お使いです」
「はは。お使い?」


