雑巾投げでもして遊んでいたんだろう。
「アイ、大丈夫っ?」
「…クソっ! なんなんだよ!」
アイって人は雑巾を地面に叩きつけ、上方の生徒とあたしを強く睨みつけてから、肩を怒らせて去っていった。
他の人たちもそれを追いかけていく。
ユウナっていうらしい美人だけ、しばらくあたしを見てたけど、そのまま何も言わずに去っていった。
「大丈夫~?」
また上から声が降ってくる。
さっき雑巾を落とした男女…たぶん先輩があたしに手をふっている。
なんだ、そっか。
助けられたのか。
「あの! ありがとうございました!」
「いえいえ~!」
「ええと…いまの、見なかったことにしてもらえますかっ?」
「え、何でー?」
そんなの、また変な噂になったら面倒だからに決まってる。
静かにしてるのが一番いいんだってことを、あたしはよく知っていた。
「お願いしますっ」
彼らに深く頭を下げて、昼休みが終わる前に急いで校舎に戻った。


