叩かれた頬がジィンとしびれる。
「ちょっとやめて、アイ」
美人が眉をひそめて止めに入ろうとしたけど、アイという女はそれをムシする。
何か、あたしが相手の感情をひどく刺激してしまったらしい。
アイって人の目が血走ってる。
「テメェ生意気なんだよ! ユウナの方が百倍美人だっつーのッ」
女の右手が、再び高く上げられる。
たぶんあのキツめの美人が『ユウナ』なんだろうな…
そんなことを考えながら、迫りくるビンタに目をつむった。
その直後、
ビチャッ……
湿ったような気味の悪い音がして、それからしばらく待ってもビンタの衝撃はなく。
おそるおそる目を開けると、予想しない光景が待っていた。
アイって人の頭に、びしょ濡れの…
雑巾。
なんで…?
「あー、すみませーん! 落としちゃいました~」
「大丈夫ですかぁ~?」
声がした上の方を見ると、校舎の三階の窓から、生徒が何人かこっちを見下ろしていた。


