これでいいだろうと思って、ため息も我慢して言ったのに。
「ちょっと、アイ…?」
美人の後ろからツカツカ出てきた女子に、あたしは平手打ちをくらった。
パァンッ!!
乾いた音が派手に響き、数秒チカチカと視界の隅が光った。
痛みが脳に伝わるよりも前に、あたしの手が仕返ししようと動きそうになったけれど。
そんなことをしてどうなるというのか。
暴力なんて何の役にも立たないと、理性が手の動きを封じ込めた。
暴力を暴力で返したら、あたしは自分を嫌いになっていただろう。
「いた……」
何だか自分が情けなかった。
あたしがこういう人間相手に冷静に対処しても、相手の感情を余計にヒートアップさせるだけ。
わかっているんだけど、いつもこうなる。
中学の時も、上級生にこうして囲まれたことがあったっけ。
あたしはどうしてもっと上手く、立ち回れないんだろう。


