あたしはため息を我慢して頭を振った。
「別にあれは彼氏でもなんでもないです」
「ふーん。付き合ってなけりゃ二股かけてもいいってコトかよ」
誰がそんなコト言った!
あたしが唖然とすると、美人の後ろの三人は早口でまくし立てた。
「コータ先輩に近寄るんじゃねーよ」
「調子こきすぎ。うぜぇんだよテメー」
「みんな知ってんだよ。テメー他にも男に手ェ出してんだろ?」
はァ? まだいるの?
他にも噂があるわけ?
うんざりだ。
何もかもが、嫌になってくる。
あたしはそんなに赤の他人から非難されるような、悪いことをしたんだろうか。
泣きたいというよりは、笑いたい気分だ。
「別にアンタが何人股かけようが関係ないけど…」
あたしが芝生に目を落としながら、本当に笑ってしまいそうになった時、黙っていた美人が口を開いた。
「コータ先輩は別。彼にだけは近づかないで」
彼女はあたしを見据えて、真剣な声で言った。


