あたしは泣きながら、小さく笑えた。
「…三上くんこそ、なにしてたの?」
「図書室に頼んでた本が入ったから、読んできた」
優等生は、帰る準備をしながら答える。
あたしはまだ、ぼんやり校門を見ていたけど、なんとか涙は止まってくれた。
「…帰らないの?」
三上くんが動かないあたしに問いかける。
「帰れないの」
「帰れない?」
彼はあたしの目線を追って、「ふうん」と相槌。
「…イイコト教えてあげようか」
「え?」
「体育館の裏に行ってみるといいよ。木に隠れてるから、見つけにくいかもしれないけど」
「体育館…?」
「うん。じゃあ、お先に」
優等生は意味不明なことを言って、さっさと帰っていった。
いつもの涼しい顔で、そっけなく。
「体育館…」
でも彼がクールに見えて、実は優しい人だってあたしは知っている。
もう一度校門を見て、迷いながらも立ち上がった。


