「美緒ちゃんはそういうコト、言わないよ」


また強く断言するように言われ、頭にカッと血がのぼるのを感じた。


「は? あたしのことわかってるみたいに言わないで。アンタが知ってるのはあたしの過去でしょ。それをあたしに思い出してほしくて、付きまとってんでしょ」

「…………」

「…あたしも自分の過去はちょっと気になるから、いままで付き合ってやったけど。思い出せそうにないし、もうやめた。あんたもあきらめれば? 損も得もないんでしょ」

「だからこそだよ」


まくしたてるあたしに対して、恭一は冷静に、めずらしく真剣な顔をしてあたしを見た。

少し、こわい顔。

締まりのある顔もできるんじゃん、なんて余裕のある考えはこの時は浮かばなかった。


「損得じゃないから、あきらめたくないんだ」


またそれか。

ラーメン屋でもそんなことを言っていたけど、それっぽっちの言葉であたしが理解できるわけないじゃないか。