「…もう来ないで」


恭一のたれ目が、数度の瞬きの後に見開かれる。


「ど、どしたの急に?」

「…もうイヤなの。あたしに関わらないで」

「だからなんで…」

「学校にもココにも、家にも来ないで。電話もメールもやめて」

「いや、だからねっ? 急にどうしちゃったの? 何かあったの?」


伸ばされた手を、あたしは強く叩き落とす。

その反応に今度こそ、恭一は言葉を失ってあたしを見た。


「うっとうしいんだよ、アンタの存在が」


本当にそう思ったから言ったはずのに。

本音を言っただけなのに。

こんなに心が痛むのは、なぜ?

しばらくの沈黙の後、恭一は赤いメットを見下ろしながら口を開いた。


「………何か、あったんでしょ」


戸惑ったように、でもどこか確信しているように言う。

あたしは笑った。


「なに言ってんの? うっとうしいって言ったじゃん」