風の詩ーー君に届け

オーケストラに重なる詩月のヴァイオリンが、主張し過ぎることなく絶妙の調和を生み出す。





頼りなく懸命に妹尾の音を聴き、震えていた華奢な肩が信じられない。




穏やかな微笑みを浮かべたような、和かな表情。



理久は自信に満ち、堂々とした詩月の立ち姿に目を見張る。




あれが……詩月!?


目を疑う。




自信満々だった妹尾の顔が、曲が進むにつれ曇っていく。




定位置から詩月を睨むように見つめる顔が、悔しさに歪んでいく。




どうして?




妹尾の声が聞こえてきそうだと理久は思う。




先ほど妹尾の弾いた演奏は素人目にも、上手いと感じる演奏だった。




かなりの弾き手なのは、前コンマスだったという話からもわかる。