風の詩ーー君に届け

すっと背筋を伸ばし、颯爽と弓を構えた詩月の表情が硬い。



指揮者の目が、詩月に注がれ、タクトが微かな合図を送ると、詩月の表情が変わった。




つい先程まで深刻な緊張した顔で、懸命に妹尾の弾くヴァイオリン演奏を聴いていた険しさも悲壮感も、一切感じさせない。




凛としてヴァイオリンを弾き始める。



優しく静かで柔らかな、ヴァイオリンの音が奏でられる。


演奏は第4楽章木星から続けて第7楽章海王星へと進む。


耳に心地好く、自然と聴こえてくる音色が胸に染み入る。




音合わせ直前に楽譜を受け取った、違和感も辿々しさも硬さも緊張感もない。




妹尾の弾いたヴァイオリンの音色など、比較にならない。




何物にも染まらない澄みきった、透明感のある音色の響きに癒される。