風の詩ーー君に届け

練習室でショパンを弾いていて気に入らず、思い余って楽譜を引き裂いた時。

いきなり入ってきて腕を掴まれたことがある。




随分、前のことのように思える。


詩月はまだ2年も経っていないんだなと、ため息をつく。




あの時は、郁子の言葉に反発し、郁子の涙に戸惑い「弾く気が削がれた」などと捨て台詞を吐き、練習室を出た詩月だった。




申し訳なかったな



詩月は今更ながら思う。




あの時は、大人気なかった。

何かに、誰かに思いを吐き出さなければ立っているのさえやっとだったと反省もする。




できない、ダメだ、そんな弱気ばかりが心の中を渦巻いていたと、電車に揺られながら思い出す。




自分の殻を破りたい。

一皮剥けなければと、気ばかり焦って自分自身の弱さと本気で向き合うことをしなかった……恐れていた。