安坂さんに言われて緒方は、やっと顔を上げる。



「周桜……くん」



「緒方、元気で。
待っているから、ウジェーヌ・イザイのピアノコンクール」



緒方は、コクり頷く。



「じれったいな」



理久が緒方の背を押す。



あっ



躓くように緒方が前のめりになり、僕は慌てて緒方を抱き止める。



「緒方……。
Ich liebe dich.(愛している)」



僕はそっと、緒方と唇を重ね囁いた。





 Fin.




「思い出は貴方と奏でたセレナーデ
心に寄せる愛しさざ波」