郁子の瞳から涙が溢れ、頬を伝う。



「緒方……」



言いながら詩月は、郁子の肩を抱き寄せる。



「ねぇ、周桜くん」



「……あのさ、……目を閉じない?」



「ん……こう?」



郁子が恐る恐る、ゆっくりと目を閉じる。



「緒方……」



詩月は囁くように郁子の名を呼び、そっと頬に口づける。



「もう1度、あなたの『Jupiter』を聴かせて」


詩月は耳元に聞こえる郁子の、間の抜けた声を聞き、「あ……緒方はSKYだった」と思う。



何も言わず、サッとヴァイオリンを構え弾き始める。


滑らかに歌い上げるヴァイオリンの響きが、空気を変える。



解放感のある自由な音色。

壮大な宇宙を思い浮かばせる迫力。



詩月はヴァイオリンを奏でながら思いを込める。