風の詩ーー君に届け

「ええ」


「緒方……エリザベート?のピアノコンクール、君と挑戦したい」



「周……桜くん」



「……君の『雨だれ』を聴いた、あのコンクールから僕のライバルは、君しかいない」



郁子の聞き返す言葉が声にならず、ただ息が漏れる。



「聖諒には、君のピアノを追ってきた……」



「ウソ……」



「前の高校で教師を殴って自主退学した時、君のピアノを思い出して……聖諒以外は考えなかった」



「そんな」



「君のピアノは正直で、君の言葉に何度も励まされて……君と音を重ねて、やっと気づいた」


詩月は真っ直ぐに、郁子の目を見つめる。



涙が零れそうで零れない郁子の瞳が、詩月を見つめ返す。



「緒方……君とエリザベートのファイナルに。
君と同じ夢がみたい」