風の詩ーー君に届け

裏門の下で聴いた二重奏の調べ。

詩月は五線譜に書き起こし仕上げた。


出来上がった楽譜を見直し、ピアノとの二重奏用、ヴァイオリン曲用に編曲した。



鞄の中には、ファイルに挟んだ二重奏の楽譜の原本とコピーが入っている。



正門前についた郁子はヴァイオリンを弾く詩月の姿を、声を掛けず静かに見守る。



詩月の音色に呼応するように木々がさざめく。



照りつける陽射しを感じないほど、爽やかな風が吹いている。



甘く優しく切なく心に染み入る調べは、寄り添い曲を奏でる女神と、男神の姿が見えるようだ。



――これが……ヴァイオリンロマンス



郁子がうっとりと聴きながら、溜め息を漏らす。



風が囁くように優しく、心を癒していく調べと、詩月のヴァイオリンの繊細な音色。