風の詩ーー君に届け

「サーカスみたいな演奏をするわね。
でも、面白かったから許してあげる」



妹尾がツンツンした態度で言う。



「ったく、超絶技巧演奏家も真っ青だな。
『シレーナ』が吠えてるような演奏だ。
お前みたいなヴァイオリニストは初めてだよ」



如月は言いながら笑い出す。



「最初は正直、こんな奴とは演奏できないと思っていたのにな。
10月……期限が来なきゃいいと思うよ。
留学するんだろ、準備は進めているのか?」



如月が口惜しそうに訊ねる。



「……はい」


緊張したように詩月は呟く。





こんな風に、このオケを信頼して演奏できるなんて思わなかった。

こんな風に、笑顔で声を掛けてもらえる日が来るなんて思わなかった。