会場が満天の星空に包まれ、どこまでも続く壮大な宇宙と化す。


どこまでも伸びていく澄んだ音色、何物にも遮られない自由な音色が、天空を駆け巡る。



詩月のヴァイオリンが最後の1音を弾き終える。



総立ちの観客の怒涛のような歓声と割れるような拍手が、会場の外にまで響いた。

ゆっくりと幕が降りるのを待たずに、オケの歓声が舞台に溢れる。



高揚したオケのメンバーの顔。

互いに抱き合い歓喜する姿。



妹尾が感極まり、声をあげコンマスの如月に抱きつく。



マエストロ、ジョルジュが逞しい腕で詩月の体を強く抱き寄せ、何度も繰り返す「Wunderbar!」の声が、詩月の耳元で響く。



詩月はこれが、あの纏まらなかったオケだとは、信じられずに、言葉も忘れマエストロの胸に身を預けた。