風の詩ーー君に届け

「ちッ、理久。決め台詞を奪うなよ」



「いや、つい……ノリで」


理久は悪戯っぽく笑って言う。



「理久、いつから聞いてた?」



「ウジェーヌ何とかって辺りからか、後ろの席にいた。

ダメだって言われてた留学の許可が出たんだから、勇気出していいんじゃないか。

2年前に悔しい思いをしたんだから」



「ん……」


詩月は頼りなく微笑む。


「で、郁子とのデートはどうだったんだ?

郁子に聞いても内緒って言って話さないんだよな」



「えっと……、そろそろ時間なんで」


詩月は急いで五線譜を鞄に仕舞い、伝票を手に立ち上がる。


「照れるな、照れるな」



「て、照れてなんか……安坂さん。少し楽になりました。ありがとう」



「おお」



「譜面、仕上げたら見てください」



「わかった」