風の詩ーー君に届け

「お前の体の状態、俺は知らないし詳しく聞いたところで、たぶん理解なんてできないだろうけど……リスクのないチャンスなんてないと思う。
がむしゃらに頑張る時、リスクを何倍にも越えるラッキーが幾つも味方してくれる気がしないか?」



「――リスクのないチャンスなんてないと」



「うん。最近、門崎元准教授がさ、週に数回カルチャーセンターでヴァイオリンを教えてるんだ」



「アランが!?」



「ああ、まだ指がちゃんと動くわけではないし、聴かせられるような演奏だってできない。

けど、動かない指をさらけ出して、ヴァイオリンを教えてるんだ。

あの曲、お前がコンクール本選で弾いたチャイコフスキーの「懐かしい土地の思い出」を、リリィさんとの思い出の曲を弾きたいから、生徒と一緒に練習するんだって」