風の詩ーー君に届け

――出藍之誉――青は藍より出でて藍より青し……か

安坂は、弟子が師匠を越え、師匠の偉大さを証明してみせるという筍子の言葉を思い出す。


「目指しているコンクールがあるのは知っていたが。
リリィと間崎元准教授、あのヴァイオリンでも予選落ちしたコンクールで決勝を狙う、その自信があるのか?」



「自信なんてありません。
でも敵討ちをしたい。
そしてリリィを越えたい。
そして何より、『シレーナ』で勝ちたいんです」


「ずいぶん欲張りだな」



そう言いながら、安坂の目は笑っていない。


ショパンやチャイコフスキーコンクールと並ぶ3大国際音楽コンクールだ。


挑戦したいという以上、それなりの覚悟はしているだろうと思う。

「シレーナ」は各地を転々とし、放浪の製作者と呼ばれたガダニーニが作ったヴァイオリンだ。

彼が1758年に作ったヴァイオリンは本来、評価が低い。