風の詩ーー君に届け

「出来上がったら是非とも楽譜がほしいな」



「安坂さん……、聴こえる曲って誰でも同じだと思いますか?」



「どうだろうな……。
それより、お前って書き方が可笑しくないか?」



安坂が首を傾げる。


五線譜の上側が詩月側を向き、下側が安坂側を向いている。



書いている内容が丸見えになっている。



左手にシャープペンシルを持ち、詩月は文字を逆さまから器用に書いていく。



「そうですか?」



「左利きで横書きは書きにくいという話はよく聞くが、お前みたいな書き方する奴……初めてみる。
逆さまに書くのはともかく、読みにくくないのか?」



「ん……とくに不自由は感じませんよ。
右手でも大丈夫ですが、左手の方が書きやすいので」


「お前はホント、見ていて飽きないよ。
で、何を願ったんだ?」