郁子は胸を締め付けられる、甘く優しい音色に「周桜くん」と呟く。



詩月の奏でる音色から伝わる詩月の想いが、胸に染み伝わってくる。



Xceon(エクシオン)の3人は、こんな凄い演奏をするのに「不器用だな」と感じながら、「Jupiter」を弾く。



詩月の視線の先にいる郁子に、気付いて詩月の横顔をチラと見る。



薄く微かに紅く色付いた詩月の頬と、額に滲む汗。




澄まし顔で弾く詩月しか知らなかった彼らの目に、ポスターに映る営業スマイルでも、CMのPVでも見せなかった優しい顔が映る。



昼過ぎからのNフィル練習を終え、コンサート開演に間に合うよう駆けつけた詩月。



夏CMの試写会の時に比べ、また少し痩せたようにも感じる。



週刊誌の記事にも書かれていた、心臓病を抱えた細く華奢な体。



この人の体力の限界は、とうに越えているのかもしれない。