風の詩ーー君に届け

甘く優しい羽衣茉莉花の香りに包まれていくような、ヴァイオリンの音色が響き渡る。



「『Jupiter』は壊さないから……」



Xceon(エクシオン)の3人は詩月の言葉を思い出し、改めて詩月の技量を思い知らされる。



切ないほど優しく甘い、ヴァイオリンの音色から「届けたい思いがある」と言った詩月の誰かへ向けた想いが伝わってくるのを感じ、胸が苦しくなった。




演奏をしているXceon(エクシオン)にも何が起きているのか、わからない。



詩月のヴァイオリンから奏でられる曲は、「Jupiter」ではない。



だが、音色が調和している。



甘く優しい調べ、透き通るようなヴァイオリンの音色が心地好く響く。



――詩月……さん!?



ホルスト作曲「Jupiter」に、全く曲調の違う曲が融合し、一体化する。