風の詩ーー君に届け

幾重にも重なるアンコールの声が、木霊のように次から次に押し寄せる。



Xceon(エクシオン)のメンバーと共に、楽器を握りしめ、そっと音を立てず、真っ暗な舞台に向かう。



詩月は体育会系の遥に手を引かれ、ゆっくりと。



「詩月さん、大丈夫?」



繋いだ詩月の手の火照りに、遥は詩月の顔を覗きこむ。



「熱、いつから?」



「微熱だ。常に37℃くらいあるんだ……今日はまだ、38℃を越えてない」


詩月はポツリ返事をする。



「38℃を……って」



「解熱剤と、ニトロは常備している」



「!?……あはは、傑作」



「何か可笑しなことを言ったか?」



「シーっ、スタンバイしろ」



リーダーの昴に叱られ詩月と遥は黙り、定位置につく。