風の詩ーー君に届け

「凄いよ。ぶっつけ本番であんな演奏するなんて」



リーダー昴とチューバを吹いた大人しい空までも感極まり、詩月に抱きつく。



Xceon(エクシオン)の3人は詩月に抱きつき、詩月が見た目の細さより更に、細く華奢なことに気付く。



火照った詩月の体は歓喜や興奮で熱いのではなく、熱が高いからではないかと不安になる。



アンコールまで付き合わせて大丈夫だろうか



Xceon(エクシオン)の3人は頼りなく喘ぐように、息をつく詩月の体を支える。



「……歌わなくていいのか」



昴の耳元にやっと届くような声で、詩月が訊ねる。



「でも……」


彼らは手を離せば、詩月が倒れてしまうような気がしてならない。



「……大丈夫だから……弾きたい曲があるんだ……聴かせたい人がいるんだ」



囁くように細い声で、詩月が言う。



「――詩月さん」