風の詩ーー君に届け

曲がゆっくりと演奏の余韻を残し、フェイドアウトする。



会場に歓声と声援が戻ったが、「Jupiter」演奏の前とは違っている。


悲鳴のような金切り声や甲高い叫びではない。


詩月がクラシックコンサートやNフィル講演で、見慣れている反応。


観客が総立ちになり、怒涛のような拍手の嵐が沸き上がった。



高揚する詩月の額に汗が滲む。


歓声と拍手の渦を浴びながら、詩月とXceon(エクシオン)メンバーは、深々と頭を下げる。



顔を上げると、再び悲鳴のような甲高い叫びが会場のあちらこちらから上がった。



詩月の呼吸は、息をまともにつけないくらい乱れている。



「大丈夫?」


目眩で微かにふらつく詩月を、体育会系の遥がトランペットを手にしたまま支え、声を掛ける。