風の詩ーー君に届け

1人ではない。

緒方に出会ったこと。
Xceon(エクシオン)に出会ったことも。


胸の奥が熱い。


「Jupiter」をこの手でXceon(エクシオン)と奏でていることも。


自分のこの両手で、できることは限られている。


何ができるかも定かではない。


でも、詩月はこの手で奏でる音色が誰かの心を、動かせることを信じたいと思った。



詩月は2年前まで、孤独と自らの才能と父親との確執の中で、ただ喘いでいた。


万葉集の防人の歌で、自分の己少さを納得させようとした。



できないことばかりを並べて、自分自身の可能性も夢も諦めようとした。



「あなたの意志が希望を生む」



絶望という闇の中で、詩月は郁子の言葉に励まされた。



郁子と共に奏でたピアノ、郁子の涙を思い出す。