風の詩ーー君に届け

「君も周りのように破目を外していい」



郁子が「でも……」と、不安そうに詩月の顔を覗き込む。



「……ノリが悪いよな」



耳打ちをする声も、歓声に掻き消される。


郁子の手が、詩月の手にそっと触れる。



こういう気配りができるのに、何故SKYなのかが理解できないよな。


詩月はフッと息をつく。




観客の熱気と興奮で会場の温度が上がっているのか、詩月の体が火照っているのか、詩月は蒸し暑く感じ、受付でもらったチラシを丸めて扇ぐ。



コンサートが始まり1時間半弱が過ぎている。



マネージャーに指示された時間が近づいている。



「緒方……外の空気にあたってくる」



郁子の耳元に伝え、詩月はヴァイオリンケースを抱えて席を立つ。