詩月は郁子を抱き寄せ、やっとわかった気がし、返す言葉がない。


詩月の顔が火照る。



「まあ、郁子と俺の噂って色々されてるし、大抵一緒にいるからね」



「安坂……さん?」



「郁って見た目と違って天然だろう!? 危なっかしくてね。幼なじみだし、側にいるのが当たり前過ぎて恋愛感情って沸かないな」


安坂を見つめ、郁子がむくれている。



「天然っていうのは……どうかと思いますがSKY(スーパー空気読めない)なのは認めます」



「だろう。……ってお前も結構、天然だよな。『届かないなら届くまで追ってこい』なんて、愛の告白。普通はしないよな」



「あ、愛の……」



照れる詩月の側で、郁子が首を傾げている。



「えーーー!? 郁、まさか……」


「気づいてないならいいです!! 言わなくていいです」


詩月は背伸びをし、安坂の口に慌てて手を伸ばした。