風の詩ーー君に届け

纏まらないオーケストラを従えて、ヴァイオリンを弾いているような重苦しさ。



息があがる。
呼吸が乱れる。
指に痛みが走る。

目眩が襲う。



詩月の体に、涙を堪える郁子の肩の震えが伝わる。




「雨だれ」を弾いた、あのコンクール。


優勝して尚、敗北感を味合わされた圧倒的な演奏をしたピアニスト。


隣で「ロマンス2番」を弾く緒方が、同一人物とは思えない。


いや、思いたくない。

何かの間違いだ……。



詩月が打ち消そうとする思いに反し、郁子の涙で滑る鍵盤を叩き続けた。



曲を弾き終え、詩月は胸に手をきつく押し当てる。



「……緒方、らしくないな。

……君がこんなに乱れるなんて」


詩月は呼吸を整えることもせず、喘ぐように息をつきながら言葉を絞り出す。