風の詩ーー君に届け

「あの『ヴァイオリンロマンス』のメモに書いてあったの。裏門の男神像の下で弾く曲だって」



――オルフェウスが奏でるのは、「ショパンの夜想曲」ではなく、ベートーベンの「ロマンス第2番」だと、裏門の男神像を見上げ思った、あの直感。



詩月は「オルフェウスはベートーベンのロマンス2番だよな」と呟く。



「オルフェウス?」



「裏門の像、オルフェウスみたいだろ」



詩月の言葉に郁子が頬を染める。



横を向くと確実に緒方の顔がある。

息が掛かるほど近くに緒方がいる。


そう思うと、詩月は落ち着かない。


体が火照り胸の鼓動が激しくなるのを感じ、詩月は深く息をつく。



「どうかした?」


「いや……」


郁子と指が交差するたび、詩月は胸がトクン跳ねるのを感じてしまう。