風の詩ーー君に届け

「あの人が……恐かった」


「会議が長引いてって言ってたな。

『君らを傷つけたくない』って言った気迫が凄かった。

だから……交代なんて彼女から望むはずがないと思う。

真意を聞きたくて……守りたいなら自殺なんてするなって言いたくて」



「もしかして、デート中だった?」


チャラ男、遥がニヤニヤしながら訊ねる。


「デート……」



緒方と顔を見合わせる。



「ん……そうね。

端から見たらデートかも」


「緒方……偶然、同じ電車に乗り合わせただけだろ」


「偶然? なのに、一緒に!?」



電車内でのアクシデントが頭を過る。


鞄の中に入れた口紅のついたシャツ、首筋に触れた緒方の唇の感触を思い出す。