風の詩ーー君に届け

「生命論……哲学的ね」



「そうだな。

あの頃は、防人の歌に希望なんて感じなかった。

ただ、雄大な世界観の中に孤独と儚さと哀れさを感じただけだった。

だから……、風と共に去りぬのラストシーンの英訳を『絶望から希望は生まれる』と訳した。


稀少な細胞の1つが起こす命の奇跡もあるなんて、考えもしなかった。

60兆もの細胞が、日々生まれ変わる命の神秘。

死んでいく細胞の側で生まれてくる細胞があるんだ。

希望だろ、それって」




「『希望から希望が生まれる』?」



「そう、目から鱗だったんだ。


シェイクスピアのリチャード三世だったかな。

『今がどん底なんて言えない。

自分から、今がどん底だなどと言える間は』っていう台詞があるんだけど」