風の詩ーー君に届け

「そこがかわいいのよ」


緒方がはにかむように笑う。


「そうか? ふてぶてしいネコだと思うし、指を引っ掻かれたくないからな」



電車が構内に入り、静かに停まる。

キャップを目深に被り直し、電車を降りる。



「シャツをどうにかしなきゃ、口紅って落とすのが難しいのよ。

下手に触ると広がってしまうし、クリーニング店で染み抜きをしてもらわなきゃ」


「そうなんだ」



「だから、替えのシャツを」



緒方は電車を待たずに、すたすたと歩いていく。



「ちょっ……待てよ」



緒方は振り返り、「あっ」と何かに気付いたような顔をし、僕が追いつくのを待ち歩調を合わせる。



気を遣われている感が伝わり、気が滅入る。