風の詩ーー君に届け

「気にしなくていい」


言いながら、冷房対策用に持ち歩いている上着を鞄から取り出し、上着を肩にかけ、襟元を隠そうとする。


緊張で胸の鼓動が止まらない。




「演奏の邪魔になるわ。これからNフィルでしょう?」



緒方が、襟元を隠そうと上着を調整しながら訊ねる。



緒方の顔が、息が掛かるほど近くにある。



仄かに香るフレグランスの匂い。

胸の鼓動が加速する。



車内の視線も、こちらに集中していて緒方を睨んでいるように感じる。




「緒方……次の停車駅で降りないか?

Nフィルまでには時間もある」



Xceon(エクシオン)のマネージャーのことは話せないし、行ってXceon(エクシオン)のメンバーにも、マネージャーにも会えるかどうかもわからない。