風の詩ーー君に届け

電車の揺れに緒方の顔が近づいたり離れたりを数回繰り返す。


「手を……はな」


言いかけて緒方の手を払おうとした時、電車が激しく揺れた。



緒方は壁に手を着こうとし、バランスを崩し座っている僕に覆い被さる。



柔らかく暖かいものが首筋に触れる。



「緒方……」



緒方が膝の上にいて、緒方の顔が肩の上にある。



「あ……」と飛び退いた緒方の頬が紅く染まっている。



「ご……ごめんなさい」


緒方の視線が首筋をみつめている。



「シャツが……シャツの襟に……口紅」



首筋に触れた柔らかく暖かいものが唇だったと知り、突き上げてくるような恥ずかしさに体が一気に火照り熱くなった。