風の詩ーー君に届け

それを聞きたいのは、僕の方だ。


喉まで出かかった言葉を飲み込み、昼間のマネージャーとのやり取りを思い出し、「ローレライ」の名が頭を過る。



「理久くんが、あなたのこと、少し様子が変だからって気にしていたけれど」



「昼間……マネージャーに会ったんだ」



人のことを「ローレライ」だなんて言いながら……何で、マネージャーが……。



「ローレライ」と言われたなど、母には言えない。


そう思い俯くと、母は「何か言われたの?」と訊ねる。



「何も」と答えた声は、ひどく震え掠れていた。



強張り震え、上手く動かない体を無理やり動かし、自室に向かい、一晩中眠れぬ夜を過ごした。



朝1番のメールには、「意識が戻った」との短い文章のみ。