風の詩ーー君に届け

「Nフィルはどうする?」


返事はないと思いつつ、敢えて訊ねる。



詩月は無言で首を横に振り、瞳を涙で滲ませる。




理久は詩月のスマホを操作し、「如月」の名を見つけて電話した。


――もしもし、周桜?



――如月さんですか、あの岩舘理久です


――理久? ああ、この間の……



――詩月、朝から熱が高くて合わせに行ける様子ではなくて今、うちの病院で点滴射ってます



――そうか、オケには伝える。

お大事に



残念そうな、如月の声が理久の耳に残る。



あれほど厭がらせをされても、休まなかったNフィルを行かないと思うほどの思いが、何なのか?


「ローレライ」の意味を理久は、知らないわけではないが今更ながら、考えさせられる。