風の詩ーー君に届け

――し、詩月さんは?

どうかしたんですか、その……さっき様子がおかしかったなって……



――様子がおかしかった!?



――詩月さん。赤坂の事務所まで来て、マネージャーに会ったみたいなんたけど、エレベーターで話した時……いつもと感じが違ったんだ



――赤坂……



理久は怪訝そうに顔をしかめる。



――すごく寂しそうで悲しそうに見えて……声をかけたけど気づかなくて……。

詩月さん、大丈夫ですか?



――マネージャーと何かあったのか?



――わかりません。

だけど、あんな詩月さんの顔を初めて見て



――わかった、心配ない。
体は大丈夫だ




理久は電話を切り、俯き震える詩月の右手をぎゅっと握った。