風の詩ーー君に届け

「マネージャーには会った?」



「ああ、楽譜をもらった」



詩月は自分が、ちゃんと応対できているのか否かも定かではない。



声が震えていないか、顔がひきつっていないか、詩月は不安でならない。



「Nフィルの合わせがあるから、また」




リーダー昴が何か言おうとするのを遮り、急ぎエレベーターに乗る。

扉が閉じるまで平静を装ったが、扉が完全に閉じると壁に寄りかかった。



掌が汗をかいているのに寒気を感じたように、体が震えている。



耳に残るマネージャーの言葉「ローレライ」が、詩月の頭の中で幾度も再生されては繰り返す。



音もなく静かに、1階で止まったエレベーターの扉が開き、詩月は足を踏み出す。


真っ直ぐに歩けているかどうかがわからなかった。