風の詩ーー君に届け

「休暇中にゆっくり考えようと思っています。

挑戦したい国際コンクールもありますし」



「そう――。先のことは上が決定することだけど……できればコンサート後は、あなたと共演させたくないわ」



机の上のティッシュペーパーを手に取り、濡れた睫毛をそっと拭き取りマネージャーは毅然と、詩月の顔を見つめる。



「容姿は確かに認めるけれど、華奢で頼りなさそうに見えるのに。

あなたの何処にあれほどのオーラが秘められているのかしら。

舞台に上がり曲を弾き始めると……カメラを向けると、まるで別人のようにオーラを放ち、魅了して止まない」



詩月は唖然とし、目をしばたかせて聞いている。



「あなただけしか見えなくなる……気づいていないのね」



「……すみません」