風の詩ーー君に届け

「郁、周桜には周桜の考えがあるんだろう。そっとしておいたほうがいい」




「でも、貢。彼って自分がどれだけ注目されているかも自覚していないし、気付いてさえいないみたいで」



安坂と郁子は窓ガラス越しに詩月を見る。


昨日まで目深に被っていたキャップは、ごく自然に被っている。



「頭を冷やした方がいいか……言うね、彼」



淹れたての珈琲をテーブルにコトリ置き、マスターが窓ガラス越しに詩月を見る。



珍しくバイトの女性がいないため、マスターが1人給仕までしている。



「昨日の様子だと、記事をかなり気に止めていたようだったけど」




「周桜くんは意地っ張りだから」



郁子が苛ついたように言う。



「そうかな。彼は……」



マスターは、言い掛けて鼻歌混じりにカウンターへと戻っていく。



「なるほど」



安坂がニヤニヤしながら珈琲を啜る。