風の詩ーー君に届け

詩月は妹尾に急げと命じ、運転手に丁寧な礼を述べ、支払いを済ませた。



お釣りを渡そうとする運転手に、「無茶を利いてもらったから」と断り、車を降りた。



時間がない。

練習室まで全力で走れば、普通なら何とか間に合う。


しくったな……。



詩月は溜め息をつき、足を速め、練習室に向かう。




妹尾さんは間に合っただろうか



あと5分早く、時間に気付いていればと思う。



それでも……。


オケのメンバーから恐れられ、録に声さえかけられずにいる妹尾の違う一面を見られたこと……。



詩月は、そのことの方が大きいと思えた。



叱責は覚悟の上たが、詩月は走らない。


いや、走れない。



Nフィル契約以来、初めての遅刻だった。