風の詩ーー君に届け

「少し混み始めたから10分では……」


メーターを上げながら運転手が言う。



「リハーサルに遅刻しそうなんだ」



後部座席で妹尾が、目を白黒させている。



「出来る限り」



運転手は、そう言うと車を走らせた。



制限速度違反ギリギリで走る。



信号待ちをなるだけ避け、右折左折を繰り返す。


遅刻するわけにはいかないとは言え、かなり危ない運転だなと詩月は思う。



車内が結構揺れるのは仕方ないと思いつつ、胃の辺りがムカムカし、


「窓、開けていい?」



詩月は訊ねるが早いか、窓を開ける。



「……冷房が」



運転手が呟いた。



――リハーサルに間に合わない


詩月の言葉が功を奏し、スタジオビルに着いたのは、タイムリミットの3分前。