風の詩ーー君に届け

「う、ウソ!!……何時からだった?」



「18時」



「あ~!! 10分前、走れば間に合うかしら」



妹尾は詩月を見上げ、訊ねる。



「直線距離で1.5キロ、アウトだな」



詩月は慌てる様子もない。



「遅刻なんて……」



妹尾のぼやきをよそに、詩月はヴァイオリンを素早くケースに仕舞い、人垣をくぐる。



さらに高々と、真っ直ぐに手を上げる。



走り込んで来たタクシーが歩道ギリギリで、停まった。



「妹尾さん、乗って」



詩月はもたつく妹尾の手をグィと引っ張り、後部座席へ押し込み、自分も急いで助手席へ乗り込んだ。



「10分で、Nフィルスタジオに間に合わせてよ」



詩月は早口に言う。