風の詩ーー君に届け

少し遠目にもわかる暗い表情、どこかやつれた顔の女性。


詩月と女性の目が合った。

身を隠すように詩月の視界から、女性が逃れようとする。


「妹尾さん!?」



詩月は思わず手を止め、叫んでいた。



「すみません」


人垣を掻き分け、詩月は妹尾の手を掴む。



その手を振り切り、妹尾はくるりと詩月に、背を向ける。



「今日は走らせるつもりなのかな?」




妹尾は唖然とした顔を 詩月に向ける。



「そんな辛そうな暗い顔をして、曲を奏でても楽しくないでしょう?」



妹尾の表情が強張る。



「妹尾さん、音楽は『音を楽しむ』って漢字を書くんだ」




妹尾の目が詩月を真っ直ぐに見つめる。