風の詩ーー君に届け

1人ではない。
孤独ではない。




詩月は自分に言い聞かせた。



詩月がモルダウを出た後。


詩月が店を出るのを待ち構えていたように、店内のあちこちで、ざわめきが起こる。




「何考えてるのかしら?」



「あんな記事をわざわざ広げて、本人に見せなくても……ね」


ヒソヒソ声も、わざと聞こえるように言っているような声もある。




――何も言わなかった。

何も言わずに……。



郁子は詩月が差し出したチケットをじっと、見つめた。



昨日発売された週刊誌。


郁子は書店の店頭で見つけて手にとった。



あの日。
詩月を見舞った郁子は、詩月が平静を装い無理をしているように思った。


応急処置のペーシングは、詩月の鎖骨から細い電極のついた線を繋ぎ、剥き出しだった。