風の詩ーー君に届け

「『絶望から……希望は生まれる』って、英訳した風と共に去りぬのラストシーンを……

緒方は否定して……『希望はあなたの意志から生まれる』笑って言った」





安坂さんが「あっ」と声を漏らす。





あの時。

安坂さんは、あの場所にいて緒方に「やめろ」と叫んでいた。




「緒方の……あの言葉に救われたんだ。

……希望を持っていいんだって……。


何年も自分の演奏ができなくて、留学もダメだって言われて……。


何もかもダメだって……諦めることが、当たり前みたいに思っていた……。


僕にとって、あの言葉は……光だった」



「周桜、あの時そんなにまで悩んでたのか」


安坂さんが大きな溜め息をつく。



「あの言葉がなかったら、僕は音楽を諦めていた……今の僕は居なかった」



話ながら目頭が熱くなった。