先生、甘い診察してください



やたらと近い距離にドキドキしつつも、勉強を着々と進めた。


時間が経つのもすっかり忘れてた。




「あ、もうこんな時間だ」

「え」


時計を見てみると、もう9時を過ぎようとしていた。




「先生、私、そろそろ帰らなきゃ……」


さすがに帰らないと。お兄ちゃんが心配してる。



「えー、もう帰るの?一緒に夕飯食べない?」

「でも……」


もっとここにいたいけど、うちの兄は怒ったら怖いからね。




「とにかく、今日は帰りますね。勉強、教えてくれて、ありがとうございました」

「そっか、わかった。家まで送るね」



送ってもらうのは、悪いなって思って、一応断ったんだけど、



「女の子がこんな時間に1人で歩くのは危ないよ!」


そう強く言われ、送ってもらう事に。




「ご褒美何がいいか考えておいてねー」

「はい」



好きな人に家まで送ってもらうって、何かいいな。






あっという間に家の前に着いてしまった。



この道がいつまでも続けばいいのにな、なんて淡い願いは叶わず……。





「今日はお疲れ様。また明日ね」

「はい!こちらこそ、お疲れ様でしたっ!」



ペコッと頭を下げて、帰っていく先生の後ろ姿を、私はしばらくポーっと見つめた。