あ、そういえば。
「あの、お兄ちゃんには…何て言ったんですか?」
一体大橋先生は、あのお兄ちゃんをどうやって説得したんだろう?
「翔太くんには、お宅の可愛い可愛い妹ちゃんを借りるねって」
「えっ!」
本当にそんな事言ったの?
「何でって聞かれたから、お勉強を教えるためって言ったら、渋ってたけど、許可してくれたの」
よく許可してくれたなぁ。
それだけお兄ちゃんが、大橋先生を信頼してるって事かな。
「ところで、あやちゃん」
「はい?」
手を止めて横を見れば、頬杖をついてジッと私を見つめる先生と目が合った。
「せっかくだからさ、ご褒美欲しくない?」
「ご褒美、ですか?」
「うん。苦手な教科って何?」
「英語です」
数学とか歴史も嫌いだけど、英語が1番苦手。
日本人なのに、何で英語の勉強しないとダメなわけ?
「英語はいつも何点くらい取ってるの?」
「中学の時は、だいたい……40点台です」
極端に悪いって程でもないけど、良くもない。
「じゃあさ、英語のテスト、60点以上取ったら、ご褒美あげる」
「ほっ、本当ですか!」
英語60点以上かぁ。ちょっとハードル高い……。でも、ご褒美は欲しい。
「先生、ご褒美って何くれるんですか?」
「何が欲しいか、考えておいて。何でもOKだよ」
何でもOKって事は、デートとかも……OKって事?
「ほら、勉強再開するよー?」
「あ、はーい」

